物流の2024年問題とは?その後の現状と企業が取るべき対策を ... 物流の実務

23時40分。事務所に残って、明日の配車表を見ています。
A便のドライバーさんは、先週も着荷先で長く待たされていました。今日も同じ納品先です。
このまま組めば、拘束時間がまた膨らみます。かといって、動かせる車もいません。
それ、あなたのせいじゃないんですよね。
「2024年問題は思ったほど混乱しなかった。もう終わった話でしょ」という空気があります。
でも現場にいると、そう思えない夜が続いている。この感覚のほうが、たぶん正確です。
この記事では、2026年10月時点で押さえておくべき制度と数字を、一次情報の範囲で整理します。
そのうえで、荷待ち時間を測り、荷主と話し、AIで下準備をする手順まで、そのまま使える形で渡します。
「何も起きなかった」は、半分だけ本当です
まず、2024年4月に何が始まったのかを確認します。
トラックドライバーに対して、時間外労働の上限960時間規制と、改正改善基準告示(拘束時間などの基準)が適用されました。参考
当時は「荷物が運べなくなる」と言われました。何も対策を講じなければ、2024年度に約14%(4億トン相当)の輸送力不足が生じる可能性があるという試算もありました。参考
では、実際にどうなったか。
物流革新に向けた政策パッケージに基づく官民の取り組みで、物流機能は維持されている、という整理があります。参考
街から荷物が消えた、という事態にはなっていません。ここは「半分本当」の部分です。
先日、ロジソリューの解説記事を読んでいて唸ったんですよ。
同じ記事の中に、「物流機能は維持されている」という文と、「物流事業者の約半数が、運びにくくなった、または運べなくなった区間・地域があると回答している」という文が並んでいたからです。参考
どちらも本当なんですよね。
全体としては回っている。でも、回すために一部の区間や地域が犠牲になっている。
「混乱は起きなかった」というより、「見えにくいところに寄せて吸収した」と読むほうが、現場の肌感に合うと僕は思っています。
数字で見ると、終わっていない理由がはっきりします
通説をもう一段否定しておきます。
「2024年問題は2024年で終わった」は、数字と合いません。
2030年度に向けては、約34%の輸送能力不足が見込まれていて、抜本的な生産性向上が求められています。参考
2024年度に懸念された約14%より、不足の見込みは大きいんです。
つまり2024年問題は、2026年で終わる話ではありません。2030年問題に向かって続いていく構造的なテーマです。参考
この見方は、「物流効率化を前提とした新たな物流体制への移行が始まった」という捉え方とも重なります。参考
ここまでを、現場の判断に使える形で表にします。
| 論点 | シートで確認できる事実 | 現場での読み方 |
|---|---|---|
| 規制 | 2024年4月から960時間上限と改正改善基準告示が適用 | 「頑張って長く走る」解は使えない前提で組む |
| 当初の懸念 | 対策なしなら2024年度に約14%の輸送力不足の可能性 | 実際は官民の取り組みで機能維持。ただし吸収した負荷は残る |
| 地域への影響 | 事業者の約半数が「運びにくい・運べない区間・地域あり」 | 自社の「運びにくい区間」を先に特定しておく |
| 今後 | 2030年度に向け約34%の不足見込み | 一過性の対応では足りない。仕組みで減らす |
一方で、取り組みが進んでいる部分もあります。
ドライバーの荷待ち時間や滞在時間の短縮、積載率の向上などです。参考
この流れに、制度が乗ってきています。次の章がその話です。
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次に来るのは「待ち時間」のルールです
ここが、2026年に読む記事で一番外せないところです。
運転時間の規制は、運送会社だけで動かせる範囲に限界があります。
荷待ちや荷役は、荷主側の運用で決まる部分が大きい。だから、政策の矛先が荷主を含む構造改革へ広がっているんですよね。
ここで大事なのは、記録がないと話ができないことです。
「あの納品先はいつも待たされる」は、感覚では通じます。でも相手の前に出ると、数字がないと弱い。
細かい適用条件や対象者は、自社の場合どうなるか、国土交通省などの公式情報で必ず確認してください(要確認)。
ここでは、どの立場でも役立つ「記録を荷主との交渉材料に変える」下準備だけ扱います。
荷待ちログをAIに集計させる(プロンプト1)
手元にあるのは、デジタコの記録、日報、配車システムの出力など、バラバラな形式のはずです。
まず、それを揃えるところにAIを使います。
あなたは物流現場の運行データを整理するアシスタントです。
以下は[期間:例 2026年9月]の[拠点名]の荷待ち・荷役の記録です。
列の意味:[例 日付/納品先/到着時刻/作業開始/作業終了]
【データ】
[ここにCSVや表をそのまま貼る。個人名・車両番号は伏せる]
次の順で集計してください。
1. 「到着〜作業終了」が30分以上だった件数と、全件に占める割合
2. 同じく2時間を超えた件数
3. 納品先別に、30分以上の件数が多い順の上位5件
4. 曜日・時間帯で偏りがあれば、その傾向
5. データの欠損や、読み取れなかった行の一覧
計算の根拠となる行番号も併記し、推測で補った箇所は「推測」と明記してください。
使いどころ:月次で荷待ちが長い納品先を洗い出し、荷主との話し合いの材料にしたいとき。
出力を検証する観点:件数の合計が元データの行数と一致するか。上位5件を、Excelの並べ替えで自分でも確認する。「推測」と書かれた箇所を、そのまま資料に載せていないか。
AIは集計を間違えることがあります。
ですから「根拠の行番号を出させて、サンプルを3件は自分の目で突き合わせる」を毎回のルールにしてください。
Aさんの1日 vs Bさんの1日(想定場面)
ここで、イメージを揃えるための対比を置きます。
実在の事例ではなく、考え方を示すための想定場面です。効果の数値は入れていません。
Aさん(記録も交渉材料もない配車担当)の1日
- 7:30 ドライバーから「また着荷先で待たされてます」と電話が入る
- 10:00 先方に連絡するが「その日はたまたま混んでいた」と言われる。反論する数字がない
- 15:00 帰庫が遅れた便の拘束時間を、手計算で確認している
- 23:40 明日の配車表を、同じ納品先を前提に組み直す
Bさん(月次で荷待ちを集計し、荷主との話し合いに使っている配車担当)の1日
- 7:30 月初に出した集計で、待ちが長い納品先は把握済み。その日の配車は時間帯をずらして組んである
- 10:00 先方との定例で、集計表を見せながら「この曜日のこの時間帯が重なっています」と具体的に話す
- 15:00 帰庫後の拘束時間は、日報データからほぼ自動で出てくる
- 20:00 翌日の配車表はほぼ固まり、残るのはイレギュラー対応だけ
Bさんが特別に賢いわけではありません。
測っているかどうかの差です。そして、測る作業の下ごしらえは、AIに任せられます。
ここで僕自身の話を一つ
匠座では、毎朝の記事生成にAIを使っています。品質ゲートの大事な一つが、「一次情報シートにない数字は書かない」というルールです。
今回の記事も、同じ縛りで書いています。
だからこの記事には、「AI導入で◯%削減」のような派手な数字は出てきません。シートにない数字を書けば、読者の信頼が一番先に崩れるからです。
現場のデータ集計も、同じ考え方でいくのが安全だと思ってます。
AIが出した数字は、元データと突き合わせて初めて使える。この確認を省くと、荷主との交渉の席で一発で崩れます。
荷主との交渉は、「お願い」ではなく「共同の課題」として出します
数字が揃ったら、次は話し合いです。
ここで多い失敗が、「困ってるので何とかしてください」というお願いの形で出すことです。
荷主側にも、事情があります。
出荷準備の遅れ、検品の混み、バース(荷さばき場所)の空き待ちなど、原因は庫内にあることも多い。待たせたくて待たせているわけではない場合が、ほとんどなんです。
だから、非難ではなく共同の課題として出すのが、結果的に一番進みます。
2026年から2時間ルールが基本線になる流れは、荷主にとっても対応が要る話です。そこを共通の入口にできます。参考
荷主向けの改善依頼メモを下書きさせる(プロンプト2)
あなたは物流会社の営業・配車担当を補助するアシスタントです。
荷主の[担当部署名]向けに、荷待ち時間の改善相談メモをA4一枚分で下書きしてください。
【入力する事実(私が確認済みのもののみ使うこと)】
・対象期間:[例 2026年9月]
・30分以上の荷待ちが発生した件数と割合:[集計結果から転記]
・待ちが集中する曜日・時間帯:[集計結果から転記]
・相手先の事情として把握していること:[例 午前に出荷が集中している]
・こちらが出せる協力案:[例 到着時間帯の分散、事前の出荷情報の共有]
【書き方の条件】
・構成は「事実」「影響」「相談したいこと」「こちらの協力案」の順
・相手を責める表現、脅す表現は使わない
・法令や制度に触れる場合は「2026年から順次施行される改正物流効率化法で、荷待ち+荷役の合計2時間以内が基本線になる流れがある」という趣旨にとどめ、条文の細部や罰則は書かない
・入力に無い数字は絶対に書かない。不明な点は「[要確認]」と残す
使いどころ:定例会や担当者との打ち合わせ前に、論点を一枚にまとめたいとき。
出力を検証する観点:数字がすべて自分の集計と一致するか。制度の記述が、公式情報の範囲を超えていないか。言い回しが、相手の部署に対して失礼になっていないか。
AIに下書きまで任せたら、最後の送付前チェックは人が必ずやってください。
特に「制度の説明」は、AIが断定的に書き足しがちなところです。
よくある質問に先に答えます
Q1. 荷待ちの記録は、手書きの日報でも意味がありますか?
意味はあります。ただ、AIに集計させるなら、一度データ化する作業が必要です。写真に撮って文字起こしさせる手もありますが、読み取りミスが出やすい。最初の1か月だけ、紙とデータを併用して精度を見るのが安全だと思います。
Q2. 個人情報や取引先名をAIに貼っても大丈夫ですか?
一律には言えません。会社のセキュリティ規程と、使うAIサービスの利用条件(入力データの扱い)を先に確認してください(要確認)。迷うなら、個人名・車両番号は伏せ、納品先も記号に置き換えて使うのが無難です。
Q3. 費用はいくらかかりますか?
この記事のやり方は、手元の表計算と汎用の生成AIで試せる範囲です。ただ、具体的な費用はサービスや契約によって変わるので、ここでは金額を書きません(シートに根拠となる数字がないため)。
Q4. ITに詳しい人がいない会社でもできますか?
プロンプトは貼って使える形にしてあります。難しいのは操作ではなく、「記録を毎日つける運用」のほうです。まず1拠点・1か月から始めるのが現実的です。
正直な限界・つまずきどころ
万能の話はしません。うまくいかないケースも、先に書いておきます。
- 記録が取れていない会社には、AIは何も足せません。 集計の前に、データがなければ話が始まりません。まず記録の習慣づくりが先です。
- AIの集計は、そのまま信じてはいけません。 計算ミスも、データの読み違いも起きます。サンプル確認を省くと、荷主の前で恥をかきます。
- 荷主との力関係が強い現場では、数字を出しただけでは動かないことがあります。 その場合は、個社で戦わず、業界団体や上位の荷主、行政の窓口に相談するなど、別の道を考える必要があります(要確認)。
- 荷待ちが減っても、人手不足そのものは解決しません。 2030年度に向けて約34%の不足が見込まれる以上、荷待ち削減は「必要条件」であって、それだけで十分とは言えません。参考
- 向かない会社もあります。 荷待ちの問題がほとんどなく、主な課題が別(例えば庫内の人手や車両台数)にある会社は、先に別の課題を測ったほうが効きます。
つまずきの典型は、「完璧な仕組みを作ろうとして、1か月たっても集計が始まらない」ことです。
最初は粗くていい。月に1回、同じ形式で集計することのほうが、はるかに価値があります。
まとめ表と、今日やること
ここまでの流れを、一枚に整理します。
| ステップ | 一言で言うと | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 自社の荷待ち実態を把握 | 30分以上待った件数を、まず数える | 初回30分(集計は月1回) |
| 2. AIで集計・傾向整理 | 納品先・曜日・時間帯で偏りを見る | 1回10〜20分 |
| 3. 荷主向けメモを作る | 責めず、事実と協力案をセットで出す | 1回20〜30分 |
| 4. 定例で共有・改善提案 | 数字を見ながら一緒に原因を探る | 定例の中で実施 |
| 5. 変化を翌月に再測定 | 同じ形式で測り直して、効果を確認 | 月1回 |
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今日やること
今日30分でできる形に分解します。
ステップ1(10分):1か月分のデータを探す
デジタコ、日報、配車システムなど、到着時刻と作業終了時刻が分かる記録を、ひとまず1か月分探してください。見つかれば十分です。きれいに整えなくて構いません。
ステップ2(15分):プロンプト1で集計を試す
個人名や車両番号を伏せたうえで、上のプロンプト1に貼ってください。出てきた結果のうち3行だけ、元データと突き合わせます。合っていれば、使える土台ができたということです。
ステップ3(5分):「いちばん待つ納品先」を1件メモする
集計の結果から、30分以上の待ちが最も多い納品先を1件だけ選んで、メモに残してください。次の定例の議題は、まずそこから始めればいいと思います。
深夜の事務所で一人で悩む時間は、数字があれば少し短くなります。
2024年問題は、まだ続いています。だからこそ、小さく測り始めた会社から楽になっていく。僕はそう見ています。
編集長メモ:ヘリックス(執筆者について)
この記事の数字は、一次情報シートにあるものだけです。制度の細部は必ず公式情報で確認してください。まずは月1回の荷待ち集計と、3行の突き合わせから始めてみてください。
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