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保全コスト年1.8億円削減の現実:予知保全と予防保全、どちらを選ぶか

ヘリックス|匠座 編集長 プロフィール2026-09-21
※本記事はアフィリエイト広告(PR)を含みます。
保全コスト年1.8億円削減の現実:予知保全と予防保全、どちらを選ぶか

深夜2時、スマートフォンが鳴る。「コンプレッサーが止まって、ライン全停しました」。

生産管理をやっていれば、この着信の恐怖を知っているはずです。保全員が床に張り付いて、遅れていく出荷計画、翌朝の顧客への謝罪電話。毎回同じ「もっと早く気づいていれば」という後悔が残る。

でも正直に言うと、それはあなたのせいじゃないんですよね。

問題は「予防保全をやっていなかった」ことではなく、「どの保全方式が自社のどの設備に合っているか」の設計が抜けていたことにあります。「半年に1回交換する」もれっきとした予防保全だし、「センサーで予兆を検知する」予知保全も、同じ予防保全のファミリーです。この両者を「まったく別の話」として対立させているうちは、選択を誤り続けます。

この記事では、TBM・UBM・CBM・FFMという4分類を軸に違いを整理します。山形県のメーカー・ソアーが試算した年間1.8億円規模の保全コスト削減効果 参考 が現実的かどうか、PoCの費用相場から補助金の使い方まで、手順レベルで渡せるよう書きました。

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「半年に1回交換」が崩れる理由——4分類で見る保全の全体像

まず整理しておきたいのは、「予防保全」がひとつの手法ではないという点です。

JIS Z 8115(ディペンダビリティ用語)では、予防保全を「時間計画保全」と「状態監視保全」の2つに大別しています。参考 実務では、さらに細かく4分類で呼ぶのが標準的です。

分類英語名称判断基準代表的な使用例
TBMTime-Based Maintenance(時間計画保全)カレンダー・稼働時間半年に1回のベアリング交換、稼働4,000時間ごとの潤滑油入れ替え
UBMUse-Based Maintenance(使用量基準保全)使用量・回数走行距離・プレスのショット数での部品交換
CBMCondition-Based Maintenance(状態監視保全)リアルタイムの状態計測センサーで劣化を検知してから交換。予知保全とほぼ同義
FFMFailure Finding Maintenance(故障発見保全)機能の存在確認冗長系の予備機が機能しているかの定期確認

参考

予知保全の英語正式名称はPredictive Maintenance(略称PdM)で、「予兆保全」とも呼ばれます。参考 英語圏ではCBMが主流の呼称ですが 参考、指している内容はほぼ同じです。参考

また、設備保全全体は「事後保全(BM: Breakdown Maintenance)」「予防保全(TBM等)」「予知保全(CBM)」の3方式に大別されます。参考

ここで見落とされがちな視点を一つ。どの保全方式にも固有の「無駄」があるんですよね。

  • 事後保全(BM) → 計画外停止という無駄が生まれる
  • TBM(時間計画保全) → まだ使える部品を交換するという無駄が生まれる
  • 予知保全(CBM) → 監視対象を広げすぎたときの投資過多という無駄が生まれる

参考

「予知保全こそ正解」ではなく、どの無駄を許容できるかを設計することが保全戦略の本質です。計画外停止の損失がTBMの部品廃棄コストよりも明らかに大きい設備から手をつける。この優先順位の思考が重要です。

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予知保全の正体——なぜ経産省はTBMからの脱却を求めるのか

経済産業省の「スマート保安」施策では、TBM(時間計画保全)からCBM(状態監視保全)への移行と、異常検知・予兆検知の活用が明確に重視されています。参考 この背景には、保全を担う技術者の不足という現実があります。TBMは「カレンダーで動ける」という強みがある一方で、熟練技術者が手を入れて初めて機能する場面が多い。その人材が確保できなくなっている現場が、システムによる状態監視へと舵を切らざるを得ない状況になっています。

先日、昭和電工 川崎事業所(石油化学プラント)のスマートバルブ導入事例を読んでいて唸ったんですよ。石油化学プラントは24時間稼働が前提で、バルブひとつの定期点検にも大きな工数がかかります。そこに状態監視機能付きのスマートバルブを導入することで、「決まったタイミングで全数点検」から「劣化の兆候が出たバルブだけ対処」へとシフトし、保全工数の削減を実現しています。参考

この事例から学べるのは「最初から全設備にCBMを導入しようとしない」という原則です。

バルブという特定のポイントに絞ったから費用対効果が出た。全ラインに一気にセンサーを貼ろうとすると、CBM特有の「監視対象を広げすぎた分の投資過多」にはまります。参考 予知保全の第一歩は「監視対象の絞り込み」です。「止まったとき最も損害が大きい設備1台」を特定することが、CBM移行の正しい入口になります。

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計画外停止の朝 vs 予兆で動く朝——AさんBさんの1日を対比する

保全方式の違いが現場の1日をどう変えるか、具体的に見てみます。

▼ Aさんの1日(TBM運用・計画外停止が起きた日)

時刻出来事
06:00出社。前夜の稼働ログを確認するも異常なし
08:30ライン稼働スタート
10:15コンプレッサーが突然停止。ライン全停
10:20原因調査開始。ベアリングの摩耗と判明
12:00部品が在庫になく、緊急手配の連絡を開始
15:00部品到着、交換作業
夕方ライン再稼働。午前中から数時間の計画外停止が発生
翌朝顧客への納期遅延報告

前回の定期交換は3か月前。「半年に1回」のスケジュールでは間に合わなかったケースです。

▼ Bさんの1日(振動センサー+CBM運用・同じ設備・同じ劣化状態)

時刻出来事
06:00出社。ダッシュボードでコンプレッサーの振動値をチェック
09:00振動値が閾値の80%に到達。アラート通知受信
09:15ログを確認し「1週間以内に交換推奨」と判定。翌週の計画停止日に対応を決定
翌週火曜計画停止の30分でベアリング交換。部品は前日に手配済み
ダウンタイム0分(計画内に収まった)

同じ「ベアリング摩耗」でも、CBMがあれば計画の枠の中に収めることができます。

この差の積み重ねが、ソアー(山形県米沢市のOLED製造ライン)がIoT導入によって試算した年間1.8億円規模の保全コスト削減 参考 という数字の背景にあります。計画外停止が1回で数百万円の損失になる設備では、BさんとAさんの差は一気に現実的な金額に変わります。

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「数百万〜1,000万円台」の壁を越える——導入費用と補助金の現実

予防保全(TBM)の初期コストが低〜中程度なのに対し、予知保全(CBM)は中〜高のコスト帯になります。センサーの取り付け、データ収集システムの構築、AI解析ツールの導入が必要になるためです。参考

PoC(概念実証)から本番運用に至るまでのトータル費用は、数百万円〜1,000万円台が目安です。参考 センサー代だけでなく、データ基盤の構築費、外部エンジニアの工数、AIモデルのチューニング費用が積み上がります。

ただ、この金額をそのまま自己負担するケースは少ないです。活用できる補助金が2つあります。

ものづくり補助金:製造プロセスの革新に使える補助金で、AI・IoTを活用した予知保全システムの構築が対象になりやすいです。参考

省エネ補助金:センサー導入によって設備の無駄な運転を減らし、省エネ効果が見込まれる場合に活用余地があります。参考

採択要件・上限額・公募スケジュールは年度ごとに変わるため、申請前に中小企業診断士や補助金専門家に確認することを強くすすめます。

実際に補助金活用を含む製造業向けの設備点検記録・保全報告書作成のAI自動化支援を手掛けているのが株式会社GENAIです。参考 PoCの設計段階から補助金申請まで伴走してもらえるケースがあり、初めて取り組む中小メーカーが活用しやすい支援形態です。

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正直に言います——予知保全がはまらない3つのケース

万能に見える予知保全ですが、うまくいかないケースをあえて書いておきます。

① 故障データが薄すぎる設備

センサーを付けても、過去の故障データが少なければAIモデルが何も学習できません。新規設備や、これまで事後保全だけで運用してきた設備は、まずデータ蓄積の期間が必要です。計測を始めてからモデルが使い物になるまでに、相応の時間がかかることを最初から織り込んでおく必要があります。

② TBMで十分な低リスク設備

すでに6か月サイクルのTBMで問題が出ておらず、部品交換コストも低い設備は、CBMに切り替えてもROIが合わないことが多いです。「全部CBMにすべき」は誤解で、TBMのほうが合理的なケースは確実に存在します。投資は、止まったときのダメージが最も大きい設備に集中させる。参考

③ 属人化した運用は必ず崩れる

AIツールを入れても、その運用を1人が抱えている状態は危ういです。その人が異動した瞬間に、システムが形骸化します。保全データの読み方・アラートの判定基準・モデルの更新手順を複数人に渡す「知識移転」とセットでなければ、投資が無駄になります。

これは保全に限った話ではありません。僕が匠座のAIパイプライン(毎朝の記事自動生成・品質ゲート運用)を回していて実感しているのも同じことです。品質ゲートのルールを僕だけが把握している状態は、設定をひとつ変えた瞬間に全体が狂うリスクと隣り合わせです。自動化のルールと、そのルールの意味を人間に渡すこと——この2つは常にセットにしておく必要があります。

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よくある疑問に先に答えます

Q1. 社内にエンジニアがいなくても予知保全を導入できますか?

PoCの段階では、センサー選定とデータ収集の仕組みを設計できる技術者が必要です。最近はノーコード寄りのIoTプラットフォームも増えていますが、ゼロから全行程を社内だけで完結させるのはハードルが高いのが現実です。GENAIのような外部支援を活用することで、設計から導入まで伴走してもらえるケースがあります。参考

Q2. まず何台にセンサーを付けるべきですか?

1台から始めるのが基本です。最初から全設備に展開しようとすると、CBM特有の「監視対象を広げすぎた分の投資過多」にはまります。参考 「止まったとき最も損害が大きい設備1台」から始め、効果を確認してから展開範囲を広げる順序を守ってください。

Q3. TBMをやめて全部CBMに切り替える必要がありますか?

必要ありません。経産省「スマート保安」もTBMからCBMへの「移行」を推奨するものの、全廃は求めていません。参考 重要設備にCBMを導入しながら、低リスク設備はTBMを継続する「ハイブリッド運用」が、最もコスト効率の高いケースが多いです。

Q4. 補助金申請はいつから動けばいいですか?

ものづくり補助金は年に複数回の公募があります。申請書の作成には実態として数週間〜2か月程度かかるため、「導入を検討し始めた段階」で情報収集を始めるのがベターです。中小企業庁のJ-Net21で最新の公募情報を確認してください。参考

Q5. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?

センサー設置→データ蓄積→モデル構築→精度チューニングのサイクルを考えると、本番稼働まで相応の期間がかかることを前提に計画を立ててください。「すぐ効果が出る」という期待で動くと、数か月後に失望につながります。期間の見積もりは支援会社に確認するのが現実的です。

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まとめ:保全方式の選び方を整理する

ステップ一言で言うと時間の目安
① 最重要設備を1台特定止まると最も損害が大きい設備を決める社内会議1回(1〜2時間)
② 現在の保全方式を確認TBM/UBM/CBM/FFMのどれかを整理保全記録の棚卸し0.5日
③ 停止履歴を金額換算年間ダウンタイム×損失を試算1〜2日
④ PoC設計と費用見積もりセンサー・ツール・工数を試算(数百万〜1,000万円台)1〜2週間
⑤ 補助金の適用確認ものづくり補助金・省エネ補助金の要件を照合専門家相談込みで1週間
⑥ PoC実施〜データ蓄積少数設備から始め、精度を検証数か月〜
⑦ 本番移行+知識移転複数人で運用できる体制を整える数か月

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今日やること——30分でできる3ステップ

Step 1(10分):「止まると最も痛い設備」を1台決める

会議は不要です。あなたが今日、感覚値で仮決めしていい。「この設備が止まったら即座に顧客影響が出る」という1台を名指しする。後で合議制で検討するより、まず仮説を立てることのほうがずっと重要です。

Step 2(10分):その設備の直近1年間の停止記録を引き出す

保全記録でも生産管理ログでも構いません。「何回止まったか」「1回あたり平均何時間か」を数字にする。このデータが、後続の費用対効果試算の土台になります。

Step 3(10分):下のプロンプトで一次試算を叩いてみる

あなたは製造業の保全エンジニアです。
以下の設備情報をもとに、予知保全(CBM)への移行可否と
PoC設計の方向性を提案してください。

【設備名】[例:コンプレッサー / 射出成形機 / 搬送ライン]
【現在の保全方式】[TBM / UBM / 事後保全 のいずれか]
【現在の点検・交換サイクル】[例:半年に1回 / 稼働4,000時間ごと]
【直近1年の計画外停止回数】[例:3回]
【1回あたりの平均停止時間】[例:数時間]
【1時間あたりのダウンタイムコスト試算】[不明なら「不明」と記入]

上記をもとに以下を提案してください:
1. CBM移行の優先度(高/中/低)とその理由
2. 検討すべきセンサーの種類(振動/温度/電流値 等)
3. PoC設計の概要(期間・計測ポイント・成否判定基準)
4. 補助金活用の観点(ものづくり補助金・省エネ補助金の適用余地)

使いどころ: 社内の保全会議の前準備、または外部支援会社への初回相談前のたたき台として。

出力を検証する観点: 提案されたセンサー種類が設備の故障モード(摩耗/熱劣化/疲労破壊 等)と合致しているか、現場技術者に確認する。

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補助金申請書の骨子を作るプロンプトも置いておきます。

あなたは補助金申請の専門家です。
以下の情報をもとに、ものづくり補助金「製造プロセス革新」枠向けの
事業計画書の骨子(300〜400字)を作成してください。

【会社概要】[業種・従業員数・主要製品]
【現在の課題】[例:計画外停止が年間◯回、年間損失◯万円]
【導入するシステム】[例:振動センサー+AIによる予知保全システム]
【期待する効果】[例:保全コスト削減、ダウンタイム削減]
【設備投資額の目安】[例:500万円]

骨子に含める要素:
- 現状の課題と数値的な裏付け
- 導入するシステムの革新性(従来のTBMとの差分を明確に)
- 定量的な効果目標
- 補助事業終了後の展開計画

使いどころ: 補助金申請の第一稿として。専門家の添削を前提に使う。

出力を検証する観点: 「革新性」が審査員に伝わる表現になっているか、自社の実態と乖離した数値が入っていないかを確認する。

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編集長メモ:ヘリックス(執筆者について
「予知保全か予防保全か」より「自社のどの設備から始めるか」が本当の問いです。この記事を比較の整理に使い、次の一手は設備1台の停止履歴を引き出すことから始めてみてください。補助金の有無で初期コストの現実は大きく変わります。
▶ あわせて読みたい:製造業における微細異常検知と予知保全
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